南日本新聞「かごしま食育レシピ90」掲載 サバの味噌煮缶 平成26年6月17日
幼いころの「サバ缶」はごちそう。特にみそ味のサバ缶は好きだ。この時期だと旬の「大名竹」とよく合う。田植えの時期になると、近所から採れたての大名竹が届けられたので、よく、母は、豆腐やちくわも加えみそ味の煮物を作った。サバ缶にはうま味たっぷりの味もついているし、鍋に入れて煮るだけなので、農作業の忙しい時期には重宝したと思う。汁けが少なくなるにつれて、サバとみその香りで台所がいっぱいになる。
出来上がると、母や私たち子どもは大皿で一緒に箸をつつくのだが、父だけは専用の小皿に取り分けられた。同じ料理なのに、父の皿には、特別なものが入っているような気がし、「とうちゃん、うんめな?」と聞いた。父は、晩酌の焼酎片手に、にっこり笑い、自分の皿のサバの身を細かくほぐし、甘からい汁をたっぷりつけて、私や妹、弟のごはんの上に、ちょこんとのせてくれた。汁のしみたごはんはとてもおいしく、お代わりもすすんだものだった。
あの時の、今は亡き父母のぬくもりを思い出しながら作るひと品は、今でも私の心を温かくする。
NPO法人 霧島食育研究会 谷山康子
4~5皿分
サバの味噌煮缶 2缶
豆腐 1丁
大名竹 3本
ちくわ 2本
みそ 大さじ4~5杯
さとう 大さじ1~2杯
※ みそ、砂糖はサバ缶の味付けで加減する
1、豆腐・ちくわは食べやすい大きさに切り、大名竹はななめ薄切りにする。
2、鍋に、1とサバの味噌煮缶を汁ごといれ、ひたひたになるよう水を加える。みそ・砂糖は、サバ缶の味付けを確認してから加える。
3、落し蓋をして、汁けが少なくなるまで煮含める。