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「田んぼを教育のフィールドに」

「田んぼを教育のフィールドに」
「自然の摂理に沿った『普通の農業』」
今年度は「農業かごしま」(鹿児島県農業改良普及研究会)という冊子に、「かごしまの食と心を受け継ぐ」というテーマで毎回寄稿させていただいております。

7,8月号は「田んぼを教育のフィールドに」と題し、霧島里山自然学校の運営で、気づき、学び、感じていることを書かせていただいております。
私自身、「自分が食べるものがどのように作られているか」ということを知らないことに、そしてそれを体験する機会がないことに大きな不安を感じていました。
地元の方のお力を得て、畑をお借りし20年前に「大豆の植え方から食べ方まで」の食農教育を始め、それを知った古江さん(霧島食育研究会理事)が参加してくださってから、独自の食農教育がスタートしました。

翌年、霧島食育研究会に入り、食農教育を担当した古江さんは、圃場に他所からほぼ持ち込まない持ち出さない作物の育て方をしています。
霧島食育研究会の食農教育は「効率を優先させない」やり方です。
「田植えのときも、植える場所を指定し列を作り同じスピードで同じ間隔で植えるやり方はしません。型にはめず、自由に植えてもらいます。きれいに植えなくていい、効率を最優先しなくていいと決めているからです。
田んぼにはオタマジャクシ・タガメ・ヤゴ・ヘビ・カエル・イモリ・トンボなど多くの生き物が暮らしていて、その中で、子どもたちの手で植えられたイネは、自由に葉を伸ばし、種子を充実させます。

以前、古江さんに「無農薬・化学肥料不使用」を前面に出した方がいいのではないか、と聞いたことがあります。
その時、古江さんの「農薬や化学肥料を使うのが『普通の農業』ではなく、そして、反対にそれらを使わないのが『特別なこと』ではないよ」
「自然の営みのなかでその摂理に沿いながら作物を育てることが『普通』だと思う」という言葉が、活動の背骨になっています。
時には台風や猪・鹿の侵入により収穫量が大幅に減ることもあるります。

今、私たちが生きる社会は、暮らしそのものを、できるだけ早く、思い通りに、簡単にと望み、その望みに合わせ様々に技術を発展させてきました。
しかし、食農教育は、米や大豆が自分の力で育つ力強さと、人の手ではどうにもならない自然の営みもあるということを教えてくれるます。
それをしっかり目で見て、手で触れ、食べ物に寄り添うことができる、それが「食農教育の醍醐味」ではないかと思っています。