第290回 かごしま郷土料理マイスター®講座でした
第290回かごしま郷土料理マイスター講座を開催しました。
メインは「げたんは」です。
普通のゲタンハと、落花生など木の実をいれた「変わりゲタンハ」も作ってみました。
他の献立は
「冬瓜と鶏肉の煮物」
「里芋の共和え」
「ニラの即席漬け」
「ツルムラサキのごま酢和え」でした。
以下、昨年、南日本新聞「論点」に
「『げたんは』が伝える地域の物語」として掲載した文章の抜粋です。
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黒糖をたっぷりと使い、この上なく贅沢な菓子なのに名前はなんとも素朴である。
下駄の歯を泥で汚した様子になぞらえて名付けられたという。
そして「ゲタンハ」は横川の「駅」と「山ケ野金山」の歴史につながっている。
120年の歴史を持つ大隅横川駅。
昭和20年代まで近くには姶良伊佐地区の米の集荷場があり、多くの人でにぎわったという。
明治以降、駅周辺の菓子屋で作られていたのが、「ゲタンハ」だった。
「横川菓子」とも、また三角形の形から「三角菓子」とも呼ばれていた。
そして、横川駅から西に約8キロの山ケ野の谷間には、現在はひっそりと佇む山ケ野金山跡がある。
300年の歴史をもち、昭和28年に幕を閉じるまで、全国6位の採掘量を誇る国内屈指の金山であった。
この小さな谷間は開山当時の最盛期には全国各地より集まった最大2万もの人々で、活気あふれる大きな町の様相であったといわれている。
山ケ野金山文化財保護活用実行委員会の有川和秀さんは
「物資が豊富に運び込まれ、黒糖もふんだんにあった事より、この地でゲタンハが作られ始め、その後時を経て横川駅周辺の菓子屋で作られるようになったのではないか」と話す。
興味深いのが、山ケ野金山から約600キロ離れた島根県の世界遺産・石見銀山にも「げたのは」というお菓子があることである。
見た目はゲタンハにそっくりの三角形で、横川のものに比べ軽く、外側はパリっとしており中はサクサクとした焼き菓子である。
当地で唯一製造している菓子店有馬光栄堂の有馬大輔さんによると、
石見では「2枚をたたき合わせるとカランコロンと下駄で歩く音がする様子」から、名付けられたと言われているとのこと。
江戸時代から作り続けており詳しい由来は分からないとのことだが、幼いころからこの地で親しまれた郷土菓子で、地元の高齢者は「三角(さんかく)」と呼んでいたという。
横川の「三角菓子」と石見の「三角」に双方の食文化につながりがあるのではと、想像が膨らむ。
前述の有川和秀さんは「山ケ野金山と石見銀山で人の行き来があり、その中でゲタンハも山ケ野から石見に伝わったのでは」と話す。