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第298回 かごしま郷土料理マイスター®講座でした

第298回 かごしま郷土料理マイスター®講座を開催しました。
今回のテーマは「鹿児島のクジラ料理」です。

日本捕鯨協会様にも、資料やクジラ肉の提供をいただきました。
本当にありがとうございます。講師は、
座学「鹿児島のくじら食文化を守る会事務局長」の花田芳浩様、
料理「酒庵 朋」店主の安藤朋光様です。
花田様は、日本の捕鯨の現状、適正な捕鯨を行うことで海洋の生態系を保持しつつ食料確保に努めることが可能であること、
更に捕鯨対象のクジラとその活用法、鹿児島のクジラ食文化についてもお話くださいました。

本日使用したクジラは「ナガスクジラ」。
2019年に商業捕鯨が再開され、当時はミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラに限定されていたそうですが、
昨年よりナガスクジラが加わったとのこと。
「商業捕鯨再開後、鹿児島でナガスクジラを口にするのは皆さんが初めてかも」と花田さんの言葉に、期待が膨らみました。

調理は、安藤様の指導により
「竜田揚げ」
「さしみ」
「おばの酢味噌かけ」
「クジラご飯」
「クジラ汁」を各班で作りました。
赤身、おば、皮など使ったクジラ御膳です。
「せしからの煮物」は、事前に安藤様に調理をお願いしておりました。
せしからはもとより、クジラを汁やごはんに加える際は、一旦下茹でするとアクも抜け味が染みやすいこと、
刺身は肉の筋の方向をよく見て切ること、ドリップを丁寧にキッチンペーパーで取り除くことなど、コツを伝授くださいました。
試食では、そのおいしさにびっくりしました。
「赤身の刺身」は、臭みなどなく馬肉のような食感で柔らかく、
セシカラはジャガイモや筍などと一緒に煮て独特のだしと食感が楽しめます。
また、絶品は「竜田揚げ」。
リンゴなどのタレに漬け込んで片栗粉をつけて油でさっと揚げると、甘酸っぱい味が十分にしみて、
やわらかく、昔食べた「硬い」というイメージが吹き飛びました。

近年、クジラに含まれる「バレニン」という成分が、抗疲労効果が高いことでも注目されています。
今回、初めてクジラを召し上がった方もいらっしゃいました。
また、花田さんによると若い世代では「くじらって食べられるの?」という声もあるそうです。

日本の先人は、クジラを食用として、また鯨油として様々に活用してきました。
特に第二次世界大戦後の食糧難の時代に、命を支え今につなげた大事な食料でした。
その後、商業捕鯨一時停止の中にあっても、
「鯨」の「京」の「大きい」と意味から、正月の縁起食材としても脈々と食べ繋いできました。
現在、大豆などの植物タンパク質を原料とする代替肉や、代替タンパク質として粉末化された昆虫食にも注目が高まっており、
これらは現代の加工技術の賜物だと思います。

しかし、新しい技術だけではなく、今一度、クジラ肉など、
この地の食材を生かし無駄なく使いきる、食文化にも目を向けてほしいと思います。
郷土料理は古く懐かしいだけの存在ではありません。
21世紀の初めの苦しい時代を生きる私たちに、
祖先が時を超え「ここにはこんな食材があるよ」「こんな食べ方があるよ」「工夫してごらん」と
生き抜くための知恵と心意気を教えてくれているのではないかと思います。